オーラキャスト(Auracast™)

■ 特徴

メリット: 専用受信機が不要で、多様なデバイスで同時に音声を受信できる
デメリット: 対応機器がまだ限られており、普及はこれからの段階である

 

■ 概要

オーラキャスト(Auracast™)は、Bluetoothの新しい規格である「LE Audio」に基づく音声配信技術です。従来のBluetoothは「Classic Audio」と呼ばれ、主に1対1で機器同士を接続する方式でした。これに対してLE Audioは、より省電力・高音質・低遅延の通信を実現するとともに、1対多で音声を配信できる新しい仕組みを備えています。この1対多の音声配信機能を「オーラキャスト」と呼びます。

オーラキャストは、Bluetooth SIGが商標を保有している名称であり、この規格に準拠した製品やサービスが「オーラキャスト対応」として提供されています。

 

■ 受信範囲

オーラキャストは、送信機の性能によっては半径約100メートル程度の範囲で音声を受信することが可能です。ただし、壁や人などの遮蔽物や周囲の電波環境によって、受信距離が短くなる場合があります。特に混雑した場所では電波が遮られやすいため、利用環境に応じた送信機の設置方法が重要となります。

 

■ 送受信機器

オーラキャストは、対応する補聴器、イヤホン、専用受信機などで利用することができます。補聴器では、ReSound、Oticon、Starkeyなどが対応製品を展開しており、日本でも購入が可能です。また、一般向けのデバイスとしては、Sonyのワイヤレスイヤホン、NTTソノリティのオープンイヤー型耳スピーカー、AUDEARAの小型送受信器などが日本でも購入可能です。スマートフォンでは、Samsung ElectronicsのGalaxyシリーズの一部機種は、オーラキャストの送受信に対応しています。業務用機器として、Bettear、ヒビノ、Auriの送受信機が日本国内でも販売されています。

なお、人工内耳については、オーラキャストに対応した製品は提供されていません。

(2026年3月時点)
 

■ 従来の補聴支援システムとの違い

オーラキャストは、従来広く利用されているヒアリングループと比べて、専用受信機やTコイルを必要とせず、対応する補聴器やイヤホン、スマートフォンなどで直接音声を広い範囲で受信できる点が大きな特長です。また、1対多での同時配信が可能であり、多くの利用者に一斉に音声を届けることができます。

これにより、公共空間における新しい音声情報の伝達手段として期待されています。特に、受信距離が最大で約100メートル程度であることから、これまでヒアリングループでは対応が難しかった広い空間や移動を伴う環境においても、音声を届けることが可能になります。

つまり、これまで聞こえにくさを感じていた場所においても、音声による情報を受け取ることが可能になるのです。

 

■ 利用シーン

オーラキャストは、さまざまな場面での活用が期待されています。

  • 災害時の音声案内や避難誘導空
  • 空港や駅などの公共交通機関におけるアナウンス
  • 劇場やコンサートホールでの音声提供
  • スタジアムやアリーナでの実況音声
  • 会議や講演での音声配信
  • 教育現場での授業音声
  • 病院の待合室や商業施設等の館内放送
  • 礼拝堂や美術館など音が響く空間における音声の提供
  • 観光ツアーなど、移動しながらの音声案内

 

■ 普及状況と今後の展開

オーラキャストは、欧米を中心に公共施設や交通機関での導入が始まっており、新しい音声配信インフラとして注目されています。日本においても、実証実験や導入検討が進められており、今後、対応機器の普及とともに活用の拡大が期待されています。

一方で、ロジャーやヒアリングループといった、すでに普及している補聴支援システムも、それぞれの特長を活かしながら今後も活用されていくと考えられます。利用する場面やニーズに応じて、適切な手段を選択できる環境を整えることが重要です。オーラキャストは、こうした選択肢の一つとして、これまでの補聴支援の範囲を大きく拡張する技術といえるでしょう。

これからの補聴支援システムは、誰もが音声情報にアクセスできる環境を実現するための技術として、音声情報アクセシビリティの中核を担う存在となることが期待されています。


Auracast™は、特定の範囲内で音声情報を直接届ける新しい配信インフラです。障害のある人のためだけでなく、すべての人にとって有効なユニバーサルデザインの仕組みです。